(1)アスの手紙

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(1)アスの手紙

「アス、いいかげんにしなさい! 勉強もしないで、ゲームばっかり」  お母さんの声が エアコンのきいたリビングにひびき、あたしの肩はビクッとあがる。テレビの中のバッターは空ぶり三振。「スリーアウトチェンジ」って機械的な声がした。 「夏休みの宿題はしたの? もう八月、あっという間に二学期はじまるよ」 「今からしようと思ってたの」  あたしはコントローラーを放り出し、テレビを消しながらいった。  いっつもお母さんは、あたしがしようとするときまって先に声をかける。先まわりしていわれると、逆にやる気をなくしちゃう。 「ほかの部活、入ればよかったのに」  お母さんはお昼ごはんの片づけをしながら、大きなため息をついた。休みに入ってから、おんなじことを何回もいう。  中学の部活、そりゃあたしだって入りたかったよ。なんで女の子は野球部に入れてくれないの、って何回もいったのに。しょうがないっていったのはお母さん。  ずっと小学校から、男の子にまじって野球やってた、あたし。  六年生の夏休みは練習いっぱいして、真っ黒だったのに、今年のあたしはまっしろけ。
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