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「ねえ、覚えてる?」
「ん? なんのこと?」
あなたはわたしの問いかけに、優しく微笑む。
包み込むような柔らかい表情。
ああ、好きだなあ。わたしは改めて実感する。あなたのことを愛しく思う、自分自身のその感情の大きさを。
「七年前の、今ごろのこと」
「ああ。それ、きみと付き合い始めた頃だね」
そう、告白にオーケーしてもらったあの日を、わたしは昨日のことのようによく覚えている。
当時わたしたちはまだ大学生で、一つ違いの面倒見のいい先輩と頼りない後輩だった。あの日あのときまでは。
「覚えてる? あの日、あなたの車で」
「そうそう、駅まで送っていく途中だったね」
「わたしがなかなか言い出せなくって」
「うん、確か『話があるの』って切り出したのに、一向に口を開かないからさ、どうしたのかなって心配になっちゃったんだよね」
「だって、すごく、緊張してたんだよ?」
「うん、そうだったよね」
誰にでも分け隔てなく優しく振舞う、そんなあなたの性格に惹かれたのだけれど、穏やかで柔らかな顔つきも大好きになっていたから、とても顔を合わせてなんて、気持ちを伝えられないと思った。だから、運転席と助手席、顔を合わせないでいいシチュエーションを選んだのに、それでもわたしはなかなか、口火を切れなかった。
結局、心配したあなたが、車を脇道に止めてわたしを覗き込んできたので、わたしはもう、顔は真っ赤で、声は震えて、とにかく大変だった。
「でも、頑張って伝えて、よかったな。あの日があるから、今、あなたがこうしてここにいるんだもの」
「うん、そう言ってもらえて、僕も嬉しいよ」
「もう、あのときみたいに、若くないけどね」
「……昔もかわいかったけど、きみは今のほうが素敵だよ。大人の魅力も備わってきてさ」
「えっ」
こういうことをさらっと言えちゃうから、あなたは、ずるい。
あの日あのとき、わたしはとても幸せだった。
でも、今だって、とても幸せだ。こうしてあなたと一緒にいられるのだから。
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