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「何やってるの!」
鼻歌まじりに味噌汁を混ぜていたら、美咲さんの叫び声が聞こえた。びっくりして、身体が石のようになった。
「料理したの? 火傷とかしてない? 包丁を勝手に使ったの?」
「包丁は使ってないよ、朝ごはん作ろうと思って……」
急に捲し立てられて恐々と伝える。美咲さんは僕の手を握って、表と裏をチェックして、ほっと息を吐いた。
「キッチンに立ってたからびっくりしちゃった……。朝ごはんを作ろうとしてくれたの? ありがとう。でもあんまりびっくりさせないでね……」
「うん……」
涙ぐんでるのがわかったから、悪いことをしていたみたいで悲しくなった。
「急に怒ってごめんね。こういうときどうしたらいいかわからなくて……。私たちのこと思ってくれたんだよね。茂之さんも部屋から出てくるだろうから、みんなで食べようか」
そこから美咲さんはよそうのを手伝ってくれようとしたが、最後までやるとこだわった僕に折れて、ダイニングに座って待った。
食べ始めて気づいたが、味噌汁が味気ない。おいしくない、なぜだ。
2人は「おいしい」「えらい」と言って食べてくれるが、そんなことない。
「味噌汁まずいね……ごめんなさい。ご飯はおいしく炊けたのに……」
僕は箸を置いて誤った。料理はそれぞれの品の調和が大事なのだ。これではご飯の良さは伝わらない。
それでも美咲さんは「一真の作ったものならおいしいよ」と言ってくれた。
そういう意味じゃないから少しだけ口をつけたお椀をじっと見ていると「次はダシをいれようね。今度教えてあげる」と言った。聞いたことがあるが見たことがないダシとやらが原因だったのか。
涙を流しながら微笑んで褒めてくれる美咲さんをみて、良いことをしたのか悪いことをしたのかよくわからなかった。
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