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5時間目開始時刻と同時に、教室に滑り込むことに成功した由理菜。
教室にはすでにクラブ活動のメンバーがそろっており、それぞれ思い思いの席に着席をしていた。
先生はまだ来ていないみたいで、生徒たちは仲良しグループでおしゃべりをしたり、静かに本を読んだりしていた。
「ま、間に合った……」
ほーっと安心感にひたるヒマもなく、友達に声をかけられる。
「ゆり、遅かったね。何してたの?」
ゆり、と声をかけてくれたのは、1年生からの友達、北原 真彩。高い位置で二つにしばった髪をふわふわゆらし、こっちこっち、と手招きをしている。
窓側の前列に座る真彩を確認した時、真彩の斜め後ろに座っている木田 竜浩からも声がかけられた。
「ゆーちゃん、となりにおいで」
にっこり笑った優等生タイプの竜浩も、おいで、と由理菜に向かって手招きをしてから、自分の隣の席をポンポンと軽く叩く。
どうしようかな、と由理菜が迷うより早く、真彩が竜浩にケンカ口調で話しかける。
「っはあ?何でゆりがてめーの隣に座るんだよ?!」
「……え?も、もしかして北原、オレの隣に座りたかったの?今からでも席、移動してくる?」
大げさにウェルカムの動作をする竜浩。その動作に真彩のおでこに怒りマークが3つくらい並ぶ。マンガでよく見るあのマーク。
「誰が座るか!ボケ!!」
ふん、と鼻息を荒くした真彩がそっぽを向く。そのしぐさに笑う竜浩。
実はこの二人、何かあるたびに漫才のようなケンカをしょっちゅう繰り広げている。仲が良いのか、悪いのか。
いつもの光景を横目に、由理菜は真彩、竜浩の後ろに座っているおさななじみの雪代まなとの隣に腰を下ろした。
「はい。ゆりの分のスケッチブック」
「うわぁ~。ありがと、まあくん」
まなとからスケッチブックを受け取り、にっこり微笑む由理菜。
由理菜の微笑みにまなとのハートがトクンと音をたてる。まなとは、頬が赤くなるのを感じながら、ついつい由理菜の笑顔にみいってしまう。ほんわかした空気が流れるのを察知した真彩が怒りの矛先をまなとに向けた。
「ずりーぞ、まなとっっ」
1年生で出会ってから、由理菜が大好きな真彩の中では、隣の席に座るのも、スケッチブックを渡すのも自分の役目だったのに。
さらにまなとに文句を言おうとした矢先。
いつの間にか教室に来ていた先生に注意された。
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