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友好関係
窓から降り注ぐ太陽の光で目を覚ました劉秀は、ゆっくりと起き上がる。
身支度をしようと寝室を出たとき、声をかけられる。
「主君、おはようございます。」
「ああ、先生か。おはようございます。」
劉秀が先生と慕うのは、軍師諸鴻だった。
諸鴻が微笑み、真剣な眼差しで言う。
「本当に周へ行かれるのですか?」
それを聞いた劉秀は、顔をしかめる。
周は、圧倒的武力と諸鴻と並ぶ策士がいた。
それゆえ、劉秀自体も周とは友好関係を作っておく必要があった。
しかし、周は我が道を行き、我々が天下を摂ると息巻いている軍であった。
その軍が、劉秀に何もしないわけがない。
行けば災いになることは、軍師で無い劉秀にもわかった。
劉秀は、溜息をつき、少し困った顔で言う。
「行けば災い。だが、行かずとも、今後災いを起こすことになろう。それならば、まだ小さな災いで済ませておきたいのだ。我々にとってこの領地を奪われる訳にはいかない。」
1週間前 周の君主の愛娘の誕生日会への招待状が劉秀のもとに届いた。
行かなければ、周を軽視していると思われてしまう。
かといって、少量の兵士と共に行くとなれば、危険が伴う。
この領地を空にするわけにはいかない。
そう話をしていると、一人の兵士が来た。
「主君に拝謁致します。」
「雲州か。どうした?」
雲州と呼ばれた兵士は、諸鴻にも礼をし、話し始める。
「主君、船の準備が整いました。準備が出来次第、南門にお越しください。」
「わかった。直ぐに参ろう。」
雲州はもう一度お辞儀をすると、去っていった。
諸鴻が微笑む。
「雲州がついているんです。ちょっとのことでは、危険が及ぶことは無いでしょう。」
そう言うと、諸鴻は去っていった。
劉秀は気を引き締めると、身支度をする。
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