最終話、ここにいるということ

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 「この先、分かれ道になってる。しかも、八つに道が分かれているのと、ブタが三匹うろうろしている」  梨吹たちは草むらに隠れ、相談し合う。  「ブタ三匹、まともに相手にしたらやばそうだね。ジュアリさんのときは運が良かったけど、今度は逃げ切れる自信がない」  「分かっていると思うが、元々あの三匹は人間だ。ヴェノモは美しい都市だったが、ウェースが買収して建物も何もないこんな汚い迷路みたいな場所になっちまった。見ろ、この辺、ゴミだらけだ。ヴェノモに住んでいた人間は他所(よそ)へ出て行くか、パッシブに自分の特技を売ってブタとして生きてここで暮らして生きている。この話はロセブンから聞いた。ヴェノモはあいつの故郷だったからな……」  ワンリックは話したあと、黙り込んでしまった。美しかった頃のヴェノモに遊びに行き、ロセブンとよくお酒を飲みに行ったことを思い出していたのだろう。ワンリックをそうっとしておき、玲月と麗未で相談を進めることにした。梨吹も後ろ向きで体育座りをしていたため、そうっとしておく。ミーケは丸くなって様子をうかがっていた。  「問題はあの三匹のブタと、八つの分かれ道のどれを進んだらいいかだよね」  「地図を見た感じだと、どの道に進んでもまた分かれ道になっていて、その分かれ道もどれを進んでもまた分かれ道になっていてキリがない」
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