最終話、ここにいるということ

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 「梨吹ちゃん、料理の方だけど、もう一度、材料の野菜を切ってもらってもいい?」  「詩野輪さん、今……」  「大深さん、料理の方だけど、もう一度、材料の野菜を切ってもらってもいい?」  「ああ、言い直さなくても良かったのに」  梨吹は嬉しそうに、ヴェノモの住人たちから料理に使う材料を分けてもらっていた。  とうとう、俊五とバッティング対決をしていたウェースと、ダンス対決をしていたワグは参ったか降参をし、地面の上でバテていた。俊五とワグはイエーイとはしゃぎ回り、梨吹たちのところへ行った。  「あれ、何運んでるの?」  梨吹の姿を見つけた俊五が駆け寄った。  「あ、風雅さん、お疲れ様です。運んでるの料理の材料です。詩野輪さんの特技を取り戻すの手伝ってるところでして」  「それ、重たいだろ。持つよ」  俊五が梨吹の持っていた材料の入った箱を持った。  「すみません、ありがとうございます」  「満仁崎の特技は?」  「れっちゃんは取り戻せました。向こうでルニカさんと手芸しています」  「そっか、良かった。オレたちも特技を取り戻せたよ。オレの方は途中、打てるようになってから、ウェースと投手交代してピッチングもまた出来るようになった。ウェース、空振りしまくってたぜ」  「ははははっ」  「楽しそうな話をしてるじゃん。オレも混ぜてくれよ」  ワモが俊五の背中をタッチした。
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