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「今、テストの点を見せてもらったけど、しのっちゃん、いつもすごいよね。テストみんな百点。梨吹ちゃんは見に行かなくていいの?」
梨吹の席にメガネをかけた二つしばりの女の子が来た。親友の満仁崎玲月だ。玲月は麗未のことを「しのっちゃん」と呼んでいる。
「見になんて行きたくないよ。人は人だし。ごめん、ちょっとお手洗い」
梨吹は席を立ち、教室を出て行ってしまった。
「大深って詩野輪と仲が悪いの? あの二人、六年になって、せっかく初めて同じクラスになれたのにな」
クラスメートの男子が玲月に聞いた。
「うーん、そうだねー、しのっちゃんが絡んでくるから、梨吹ちゃんは嫌がっているだけでそれがなかったら仲は普通かな。まあ、どうして、しのっちゃんが梨吹ちゃんに絡むのか、私は何となくわかるけど」
「うわ、気になるな」
「君には教えられないな」
玲月がクラスメートの男子と話し終えたちょうど梨吹本人が戻り、休み時間が終わりのチャイムが鳴った。
本日はテストの答え合わせと直しで授業が終わり、放課後となった。梨吹は玲月に誘われ、号貝中学校のグラウンドに寄った。そこでは、野球部が活動している。練習中、バットでヒットを打った男子中学生に、女子たちの黄色い声があがった。その男子中学生に向かって玲月が叫んだ。
「おーい、しゅんさーん」
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