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「……それで拾ってきちゃったの?」
「うん」
「で、結局この人誰?」
「分からないの。話しかけても答えてくれないし、返事の変わりにお腹が鳴ってたから」
「……それで俺んちなわけね」
「That's Right」
さすが凪智なち、と微笑めば、呆れたように息をついた彼は、チラッと斜め前で生姜焼き定食を頬張るその人に視線を向けた。
「てかそもそも日本語分かんの?」
「どうだろー、でもなんか私が言ってることは伝わってる気がするんだよね。それまでいくら話しかけても反応無かったのに、何か食べるって聞けば起き上がったし」
「……言っとくけど、ここの会計つけとくからね」
「え、殺生な」
「当たり前だろ、こっちは商売なんだから」
テン、と凪智が私の名前を呼んだ時、隣で滞りなく食事を行っていたその人が急に私を振り返った。何かに驚いたかのように大きくその瞳を開いてまじまじと私を眺めてくる。だから私もつられるように彼へと顔を向けて、そうしてまた改めて思った。
……暗闇でも分かるくらいだから、明るい電気の下じゃその美しさを隠すものがなくて眩しいくらいだ。根元から完全な亜麻色をした髪の毛が、天然で生み出されたものだと知らしめてくる。そしてやはり、空の色をした酷く薄い水色が何度でも私を溺れさせる。
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