Forget me not

29/31
前へ
/239ページ
次へ
深々と頭を下げて、帆波と凪智にお願いをした。 恥ずかしながら、自分で決心したといってもやっぱり私は子どもで、とことん弱くて。誰かに背中を押されないと、この体の震えすら止められない。 誰でもいい、でも少しの我儘を足したら誰でもいいわけじゃない、ずっと私と過ごして、私のことを分かってくれてる、 友達から、言葉がもらいたい。 「……絶交中の、親友は、こう言ってます」 震える声が耳に届いた。高くて女の子らしい声は私の耳を心地よく滑り、小さな手は私の頭を優しく撫でた。 「……、絶交なんて今この瞬間解消したし、もう全然、怒ってないから……っ、いや、ほんとはちょっと怒ってるけど、もし、もしカイくんがテンを泣かしたら、ぶん殴ってやるから……っ、」 「……ほな、み、」 「私の大事な親友は、お前なんかにもったいないって、殴ってやるから……っ、」 「…………っ、」 「……、……なんでこんなになるまで、我慢してたのよぉ、……っ、」 「……っ、ごめん、」 決壊した涙腺からぽろぽろと溢れて止まらない。顔を上げることの出来ないに、「ばか……、」と文句を言いながらも、頭を撫でるその手は果てしなく優しい。 「……じゃあ、元彼の俺からも」 同じように乗せられた手のひらに、温かさが加算されて、息をするように泣いてしまう私に凪智の優しい声が届く。 「あいつよりいい男なんて星の数ほどいるよ」 それはない、とすぐ否定したら、「じゃあ星の数以上にあいつのこと好きってことだな」、と凪智の穏やかな声が続く。 「……俺の負け。 テンの気持ちの方が、ずっと強いよ」
/239ページ

最初のコメントを投稿しよう!

165人が本棚に入れています
本棚に追加