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『……嘘だね、絶対俺の方が強いよ』
あの、別れを告げた、あの苦しかった夜の日。驚くくらい冷たい瞳で告げた凪智の言葉が蘇る。
咄嗟に、顔を上げる。涙でとんでもない事になってる私の顔を見て、凪智が「さすがに拭きな?」とティッシュを差し出してくる。
「俺を踏み台にしたんだから、幸せになってくれないと困る」
「……」
「俺はテン以上にいい相手を見つけなきゃいけないんだから」
「……凪智」
「だから、頑張れよ。テンならできるだろ?」
夕暮れ時、オレンジ色の光が差し込む教室。
いつも通り登校して、いつも通り授業を受けて、お弁当を食べて、お喋りして。
些細な日常が、とてつもなく愛おしいと感じる瞬間がたまにある。
きっと、今がその時なんだ。
小さく零した私の言葉を聞いて、泣き笑いの帆波と、微笑んだ凪智に髪をめちゃくちゃになるまで撫でられた。乱れた髪に隠れてまた少し涙を流してしまったのは、きっとばれてしまってるんだと思う。
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