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「ここでカイに会ってから、どれくらい経ったかな?2ヶ月?」
「まだそんなもんか、って思う」
「色々あったしね」
目まぐるしく回りゆく記憶の中、カイとこうなることなんて誰が予想してただろう。こうして、手を繋いで、彼の瞳に出会うまで一番美しいと思っていた、夜明けの朝を待っているなんて。
……ううん、きっと、初めて会った時から分かってた。
「───東京に、行く」
変わらない声の温度で零された言葉に、うん、と頷いた。
「分かってた」
「……分かってること、分かってた」
「だってそんなの、カイと一緒に居れば分かるよ。あなたは人を殺す人間なんかじゃないし、ちゃんと人との繋がりを大切に作っていける人だって」
「……」
「だから、あっちにも、確かにカイが生きてきたものが残ってて、カイが迎えに来るのを待ってる」
当たり前だけど、私だけのものじゃないんだって、悟ってしまった。私だけが独占していい人じゃないんだって。
「応援してる」
取ってつけた安っぽさが表に出てしまったのか。この言葉を咄嗟に出してしまった自分を悔やむ。
何を言ったらいいのか分からなくて、隙間を埋めるための一時的な安易な言葉。こんなの、沈黙の方がマシだった。
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