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ぼろぼろと、止まらない涙を拭うことも無く、カイを睨んだ。繋いでいた手を振り払って、立ち上がって、彼に思いっきり言葉をぶつけた。
……なんでだろう。
だって
空は星が瞬いて輝いてるのに、
海は月明かりで煌めいてるのに、
私の周りは、私の目の前のこの人は、
こんなに美しいのに、
どうして私ばっかり、こんなに汚いんだろう。
──けれど、目の前のこの人はおかしいから、
「……なんでお前、
ここにきて一番可愛いんだよ」
どうしようもなく愛おしく、私を見つめる。
「可愛くなんか、ない……っ」
「可愛いよ」
「頭、おかしいんじゃないの……!?」
「俺がいなくなるのが怖くて、泣いてるソラが可愛い」
「……っ、」
「寂しくて八つ当たりしてるテンちゃんが可愛い」
「……ふざけんな、馬鹿、!」
近づくカイを拒否するように胸を押しても、簡単に手を取られてそのまま抱きしめられる。
髪を乱すように頭を強く引き寄せられる。肩越しにカイの温度をいっぱいに感じて、耳を掠めるその声にやっぱり涙が止まらなかった。
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