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「……ありがとな」
「……っ、カイ、」
「あの日、俺を拾ってくれてありがとう」
「……、」
「ちゃんと責任とってくれてありがとう」
「……うん、」
時が止まって、音が消えて、
カイの唇がゆっくりとその言葉を象る。
命を捨てようとした彼からのその言葉で、私はあの日に投げやりに放たれたカイの言葉の答えを見つけた。
『お前絶対後悔する、俺を拾ったこと』
……馬鹿だね、拾わない方が後悔するんだよ。
世界中の涙を集めたってくらい泣いたし、声が枯れるくらいカイの名前を呼んだし、その度強く抱きしめられたあの温もりは、明日の朝になったら全部幻になってしまうのかな。
夏の夜が怖いのは、あまりに儚く呆気なく終わってしまうから。
だからどうか、願わせて欲しい。
もしこの恋が色褪せてしまっても、
私はこの夏の記憶を一生忘れない。
誰に何を言われたとしても、
後悔なんて、絶対しない。
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