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「──なあ、頼むよ、カイ!」
「無理」
「カイ〜〜!」
「何がなんでもこの1週間だけは絶対仕事入れんなって言った。学校も課題やるっつって了承してもらったし、お前がいくら頼もうと絶対無理」
「また俺に皺寄せ来るんだよ!なぜかカイの動向については俺に連絡来るし!」
「知るか。もし無理矢理にでも来いって言うなら、ならクビでいいですって言っとけ」
はっきりと口に出せば、碧はがっくりと項垂れた。その姿に申し訳ないとは思いつつも、こうやって甘さを見せて許して、これまで死ぬ思いでとった休暇が何回なくなったことか。
スーツケースをガラガラと滑らす。薄く汚れたコンクリートの硬さが靴にも伝わり、もう、あの白い砂の柔らかさなんて記憶の彼方だ。
「あんな一生の別れみたいに言っといて、結局3ヶ月しか経ってないのに我慢できずに会いに行くの、お前そんなキャラだっけ?」
「キャラ転向したんだよ。悪いか」
「案外テンちゃんはカイいなくても楽しくやってるんじゃないの?最後の見送りもあっさりしてたし」
──それはすぐに来るその時まで、ソラが涙腺コントロールとかなんとか言って、泣くのを我慢する練習してたからだ。どんな練習だよ、って呆れたら、「じゃあ、カイは私がずっと泣いててもいいの?」って聞くから。
そんなわけない。
笑っていてくれた方が100倍いいに決まってる。
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