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でも俺には絶対的な自信があったから。
彼女とか、好きな人とか、そんな在り来りな枠組みよりも前に、
──ソラは、俺の命の恩人だから。
例えソラの中の俺への感情がいつか色褪せてしまっても、俺にとってソラは一生特別な人だし、一生感謝し続けるし、一生忘れることはないだろう。
そこに恋情なんて、あまりに自己制御できない気持ちが付随してしまったら、もう、どうしようもねえんだから、諦めてるよ。
「──じゃあな、碧。着いたら連絡するから」
「テンちゃんによろしくね」
空港の前で碧と別れ、重いはずなのになんだか軽いスーツケースを引きながら、搭乗口へと向かう。
飛ぶ前に連絡を入れておこうとスマホを取り出せば、ちょうどソラから着信が来ていた。
「……、もしもし?」
『あ、もしもしカイ?今どこ?』
「空港。もうすぐ飛行機に乗る予定だけど」
『……あ、そう、なの、あのね、えっと、』
「ソラ?どうした?」
妙に歯切れの悪い彼女に違和感をもって問い詰めれば、えっと、と迷いを見せる言葉がたどたどしく返ってくる。やけに騒がしい背景の音に耳を澄ませば、今自分が立ってる場所と酷似している音が鼓膜に響く。
「……、まさか、お前、」
『……えへ、待ってられないから来ちゃった』
「…………」
『だって1回行ってみたかったんだもん、
──東京』
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