Ocean blue

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想像していたよりもずっと暗い空の下、眠りの気配が強い島の中を歩いていく。短いショーパンから覗く自分の足が妙に白く見えて、暑いくせに寒そうだな、なんて思った。 何度か強い風に攫われる長い黒髪を辿るように見遣れば、それはいつだって視界の中に入ってくる。定規でも当てて横に真っ直ぐ線を引いたかの如く鎮座する海上線が、何者にも邪魔させることなく見えるということは、それだけこの島には何も無いということだ。 何もない。 だからこそ、常に何かを探していた気がする。 別に心を刺激するものでも、ときめかせてくれるものでもなくて良かった。ただ、漠然と心に過ぎる虚無に近い何かを消してくれるものなら何でも良かった。例えば時間を忘れて体を動かせるスポーツでも、脳が疲弊するレベルで解きまくる方程式でも、宛もなく彷徨う夜の散歩でも。 今は毎日朝早く起きて、いつだって傍にある海に近づいて、その大きな存在が運んできてると感じてしまうくらいに、光り輝く破片を集めることにはまっているだけで。 多分、新しくて夢中になれる何かがあればすぐにこの日課も止めてしまうだろう。飽きっぽいとは思う、それでいて好奇心も旺盛だ。自分でも厄介な性格をしているわりに、あまり感情を顕にするタイプでもないので、分かりにくいなとよく言われる。
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