Ocean blue

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自慢するものが自然豊かなところしかないような場所だけど、朝焼けと夕焼けの海は泣きそうなくらい美しいってことは皆にも教えたい。 どうか死ぬまでに見て欲しい、いやでも、稀な秘密を知っている優越感のまま死にたいと思う。それくらい、大袈裟にいえば、死にも生にも近いと思える瞬間だ。 裸足で歩いたら気持ちよさそうだな、なんて思う白い砂の上、所々大きい石が混じる部分に注意しながら歩を進めていく。暗闇の中でも求めているそれは、白を自身の色で染め上げれる自由を見せびらかすように輝くから、少なくとも私にはそう見えるから。 「……あった」 しゃがみ込んでそっと手を伸ばした。なんとなく、すぐに拾い上げるわけじゃなくてつん、とつついてみる。当たり前のように動かないからそこでやっと指で持ち上げて手のひらに置いてみる。 角がまるくなっているのは、たくさん波に揺れて砂と触れ合ってきたから。多くの時間を費やして自分をすり減らしてやっと、他を攻撃しないくらいまで角をなくすことができる。 人間のようだ。たくさん頑張ってきた人間のようだ。荒い社会の波に散々揉まれてこんなに小さくなって、毒気のない姿でやっと綺麗だと認められる。 頑張ったね、なんて労るように丸いそこを撫でてる自分は、大層夢見がちで痛い女なんだろうな、と苦笑しながらそれを海の水に晒せば、キラキラと輝きを増した。
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