第零話

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第零話

 歩いていた、一人の少年がダボダボパーカーを着て。  そして、  頭のうえでフサフサした二つの物体が、少年の歩行に合わせてピョコピョコと動いていた。  それは、  少年のしているヘッドホンの上部に装着されている――イノシシの子ども、"うり坊"の愛らしい耳、だった。  これを製作した人物は遊び心に溢れ、今でも子ども心を忘れず持ち続けている純真無垢な大人。  なお、  工業意匠(デザイナー)としての誇りからカラーリングは、くすんだ黒や茶色のシマシマ模様仕様。  特徴てんこ盛りヘッドホンから漏れる壮大で旋律な曲。  『(ヴォルフガング)(アマデウス).モーツァルト作曲――レクイエム 二短調 K.626』。  だが、  繰り返し、繰り返し、リピートされ聴こえてくるのは――――『怒りの日(ディエス・イレ)』。  だけだった。  そんな、  変わった少年が居る場所は、もっと変わっていた。  そこは、  毎日が怪談の大安売りで、有名な幻談(げんたん)都市。
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