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「うわぁーっ、川の向こうのリンゴ園まで見える。あそこのリンゴうまいんだぞ・・・あ・・・ま・・・その・・・ やや? おい! これ・・・ヤバいとちゃうか?オマエも覗いてみろ?」
クマは望遠鏡が動かないように前脚で押さえたまま、僕に目で訴えた。
クマの近くに寄るのは怖かった。
けれど、そんなこと言ってる場合でもなさそうな緊迫したクマの様子に、僕はほぼクマの腹に体が触れる状態で望遠鏡を覗いた。
牧場から山を下る道の途中で、青い車が道路脇に転落して横向きになっている。
中に誰か乗っているようだ。
「助けにいかなきゃ!」
と、クマが言った。
「そうだな。」
僕は、クマといっしょに展望台の階段を下りて、僕の車に向かう。
「よし、オマエは車で向かえ!俺はこのまま走って行く。」
クマは、そう言って一目散に駆け出した。
しかしなあ・・・
クマが走って来たら、車の中の人・・・驚くよな。
僕はそんなことを考えながら、同時に、自分は違う道を下りて帰ってしまおうかとも思った。
だって・・・クマだよ?!
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