僕と君の探しもの

5/12

17人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「うわぁーっ、川の向こうのリンゴ園まで見える。あそこのリンゴうまいんだぞ・・・あ・・・ま・・・その・・・ やや? おい! これ・・・ヤバいとちゃうか?オマエも覗いてみろ?」 クマは望遠鏡が動かないように前脚で押さえたまま、僕に目で訴えた。 クマの近くに寄るのは怖かった。 けれど、そんなこと言ってる場合でもなさそうな緊迫したクマの様子に、僕はほぼクマの腹に体が触れる状態で望遠鏡を覗いた。 牧場から山を下る道の途中で、青い車が道路脇に転落して横向きになっている。 中に誰か乗っているようだ。 「助けにいかなきゃ!」 と、クマが言った。 「そうだな。」 僕は、クマといっしょに展望台の階段を下りて、僕の車に向かう。 「よし、オマエは車で向かえ!俺はこのまま走って行く。」 クマは、そう言って一目散に駆け出した。 しかしなあ・・・ クマが走って来たら、車の中の人・・・驚くよな。 僕はそんなことを考えながら、同時に、自分は違う道を下りて帰ってしまおうかとも思った。 だって・・・クマだよ?!
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加