17人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
だが、クマが『助けよう』と言っているのに、ニンゲンの僕が放置するってのは、さすがに気が引ける。
僕はオドオドしながらも、クマが走って向かった青い車の転落現場に車を走らせた。
僕が現場に着くと、クマは車の近くに立って電話していた。
「運転してた男は足が痛いんだとよ。救急車、急いで・・・えっ?正確な位置?だから中山牧場の山の上だって言ってんだろうが!近くにある目印となる建物?んなモンねぇよ。山と森と牧場だけだ。住所?知るか・・・」
よく見ると、クマが使っているのは母さんのピンクの携帯電話だ!
僕が車から下りると、クマは僕に電話を渡し
「オマエ代われ。まったく日本の警察は何を考えてるんだ。こんな山奥に住所もへったくれもあるもんか!」
と、大声で怒鳴った。
僕は状況を説明し、電話を切った。
母さんの派手なピンクの携帯電話だ。
クマが拾っていたなら、いくら探しても見つからないはずだ。
青い車の若い男性は、クマに怯えていた。
「僕は大丈夫ですから。救急車が来てくれるなら、一人でも平気ですから・・・それよりクマが怖い!」
そう言って震えているので、僕はクマに言った。
「彼は大丈夫だと言っている。僕も君も、もう家に帰ろう。」
最初のコメントを投稿しよう!