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僕は車に乗って、家の方向に車を走らせ始めた。
すると後ろから、クマが追いかけて来る。
気づかないふりして少し走り続けたら、あきらめてくれるかと思ったが、クマはあきらめずに走り続け、どこまでも追いかけて来る。
あんまりクマを怒らせても怖いので、僕は仕方なく、さっき電話を探した橋の手前で車を止めた。
クマはすぐ車の前に来て
「おいっ、オマエさ。俺の電話、返せよ!」
と言う。
「この電話、もともと僕の母さんの電話だから。」
「俺が拾ったんだぞ!」
「拾ってくれて、ありがとう。だけど、母さんの電話だから、君にプレゼントするって訳にはいかないんだ。それに山じゃ充電できない。充電できなきゃ、すぐ使えなくなる。」
クマは、とてもガッカリしたように肩を落とした。
「拾ってくれたお礼はさせてもらうよ。何がいい?ハチミツ?リンゴ?」
クマは腕組みして、しばらく考えてから言った。
「食べ物はいらない。自分で見つけられる。それより、オマエ、俺の友だちになってくれよ。友だちは、なかなか見つけられないんだ。俺は、ずーっと何年もニンゲンの友だちを探してたんだ。なぜかって?ニンゲンは利口だからな。俺ら、クマと違って、何でもできる。いろいろなことを知っている。そういうニンゲンと友だちになりたいと思う、俺の気持ちくらい、わかるだろ?だけどよぅ、ニンゲンは、みんな、俺の顔を見たら、すぐ逃げてしまう。ナンにもしてないのにさ。ま、そりゃ、たまにリンゴやトウモロコシを無断で食っちまうことはあるよ。それだって、本当に、たまにだ。魚や山葡萄やコクワが、たっぷりある時にはニンゲンの畑にお邪魔することはないんだ。」
僕は、少しクマに同情しかけた。
だけど、それこそ電話もないのに、どうやってクマに会うんだ?
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