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僕が返事に困っていると、クマは一方的に、こう言った。
「今度の日曜によぅ。この橋の下で魚採ってるからよぅ。いっぱい採れたらオマエにも分けるからよぅ。ここへ来い。あんまり他のニンゲンが来ないうちの方がいいな。夜明け前。太陽が昇る少し前がいいな。約束だぞ。きっと来いよ。」
「日曜の夜明け前・・・」
またまた、ゆっくり寝られないなぁ、と思ったけど、僕は約束した。
「わかった。約束する。その代わり雨が降っても風が吹いても、君も必ず来てくれよ。僕はその時間に、ここに来るのは結構大変なんだからさ。」
「オス!約束は守る。」
クマは、はっきりそう言って、満面の笑顔で僕を見た。
僕も笑顔で窓から手を振って
「じゃあな!約束だぞ!」
と声をかけ、クマと別れて家に帰った。
母さんには、何も言わず、黙って携帯電話を手渡した。
「あら・・・こんな傷ついてたかしら?」
母さんは電話の裏面に残ったクマの爪痕を指でなぞり、眉をしかめた。
「落とした時に固い石に当たったんだろ? まあ、無事に見つかったんだから、それくらい気にするな!」
僕は、クマの笑顔を思い出し、何となく愉快な気分になった。
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