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次の日曜の夜明け前。
僕は約束通り、クマと待ち合わせた橋の下へ行った。
クマはもう、たくさんのイワナやヤマメを獲っていた。
僕の姿を見つけると、それはそれは嬉しそうに走り寄って来た。
「友だちって・・・最高だなぁ!」
クマは、そう言って嬉し涙を流した。
僕は、臭いクマの体に、思い切って抱きついた。
「そんなに喜んでもらえるなんて。僕も嬉しいよ!」
それから、クマといろんな話をした。
クマは悩みが多かった。
クマは川を見ながら、しみじみと語るのだった。
「俺はニンゲンに遠慮しいしい暮らしてるのによぅ、クマの中には、堂々とニンゲンの畑を荒らしたり、牧場の牛を襲ったりする荒くれモノがいるんだ。そいつらの印象が強烈なもんだから、クマを見るとニンゲンは怯えるんだ。ニンゲンだって乱暴者もいれば、オマエみたいに話の解る奴もいる。クマだって同じさ。その辺のところをニンゲンに解ってもらいたいんだよ。」
「なるほど。」
「そもそも、この辺りはもともとクマの住処だったのによぉ。ニンゲンは牧場を作り畑を作り、道路を作り橋を作り、俺らの食料だった山葡萄やコクワの木が少なくなって、俺らは苦労してる訳よなぁ。そこへもって、たまにニンゲンに出くわすと鉄砲で撃ち殺されたり、捕獲されて何処かへ連れ去られる。俺ら的には非常に生きづらい時代になった訳で!」
「わかるよ!」
「嬉しいなぁ。俺の気持ちをわかってもらえたら、それでいいんだ。どうせ、そう簡単に世の中が変わるとは思ってない。たった一人でも俺の気持ちに寄り添ってくれるニンゲンの友だちがいると思ったら、それだけで俺は幸せだ。そんな友だちを、ずーっと、ずーっと探してた。そんな友だちができたらいいなぁ、と、ずーっと夢見てた。だけど、まさか夢が叶うとは思わなかった。」
僕らは見つめ合い、お互いの笑顔に心から満足した。
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