砕け落ちたミルクパズル

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 ヒュッと喉が鳴った。  血色の悪い唇が悪戯に歪んだ。一音一音がはっきりと象られ、しっとりと水分を含んでパズルに落ちた。ほとんど完成したそれは、何の影も映し出さずに輝いている。 「好きな人ができたの。とーっても大好きな人」  うっとりと頬を染めた白い女は、夕焼けを眺めた。 「でもね、告白できなかった。叶わない恋だった」  残り三ピースのそれが、キリカの手に摘まれる。浮いた白は逆光で影に染まった。 「――ううん、」 「……っ」 「ねぇ、どうしてだと思う?」  逆光を纏ったまま、ソイツがピースをはめ込む。視線は一度たりともこちらに向けられなかった。 「――ねぇ、覚えてる?」  最後の二ピース。難なくまたひとつはめ込み、キリカが呪文のようにそう唱える。  足元から影が這い上がってくる。ここには俺の影しかないはずなのに、彼女から黒い何かが伸ばされているような気がして。  息が荒くなる。首元に見えない手が伸ばされている。いつかの俺を責め立てるように、ゆっくりと呼吸を奪っていった。 「私が――……」  やめろ、やめてくれ。  これ以上、俺に何をしろって言うんだ。その先を言うな。もう許してくれ。 「小林キリカが、のこと」
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