悪の記憶

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悪の記憶

俺は社会に出てすぐ会社を退職した。 それが原因だったかも知れない。 仕事を決めては、すぐに辞める。。1つの仕事が長く勤められない。 俺はそんな生き方をしてきた。 その時その時、楽しく生きられれば、それでいいと思っていた。 そんな風に人生を甘く考えていた俺が、次に起こした行動ーーそれが、窃盗だった。 お金がなければ、人から奪えばいい。 欲しいものがあれば、手段は選ばず取ればいい。 それが俺の答えだった。 そして暑い夏の日に、その事件は起きた。 街は人混みに溢れている。 大雨に見舞われているけれど、自然災害も特にはなく、人々は様々な危機感をなくしていた。 そんな時、俺は自然に横を歩いていた女性のバックを奪った。 「ーーきゃー引ったくりよー!!その人を捕まえてーー!!」 大騒ぎしている女性は、まだ20才そこそこに見える若い女だった。 ーーなんだなんだ? その悲鳴を聞き、近くにいる人たちが野次馬の様に集まってくる。。 人々の視線が痛い。。 すぐさま、俺は駆け出した。 見られちゃいけない。 俺は人目につかない狭い通路に隠れ、引ったくったバックの中に手を入れ中身を探る。 他の人からは見えないと思っていた。が、その通路の出口の方で、通行人が話している。 「ーーねぇなんか、あの人おかしくない?」 友達同士なのだろうか?しかし、俺はまだその事(見られている事)に気づいていなかった。 「男なのに女のバック持ってるって可笑しいよね??」 ガサゴソとバックの中を探している俺を、不審に見ている人の事など、まったく気づいていなかった。 「ーーあの男の人、こんなところで何をしているんだろう?」 野次馬が増えていく。 「ーー警察、呼んだ方がいいかなぁ?」
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