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「ここは何だ?」
「ここはあなたの驚異の部屋ですよ」
驚異の部屋――ヴンダーカンマー――。
近世ヨーロッパで作られた珍品を集めた博物陳列室のことだ。
王侯貴族が私的に収集したのが始まりで、奇想天外さを競い合った。
現代の有名な博物館の前身となったコレクションもあるという。
憧れはしたが、遂につくることはできなかった。
死体など残していたら、足がつく。
「ヴンダーカンマーは、俺の精神世界にあるはずだ。なぜここにあるんだ?」
「ここもまた、あなたの精神世界だからです」
「ばかげている」
「では、彼女達はどう説明するんですか?」
「……確かにそうだ。これは俺だけが知る秘密だ」
「あなただけが知る? まさか」
「俺と彼女達の秘密とでも言う気か? 死者に秘密など意味ないだろう」
「まさか。あなたのことは全て、筒抜けなんですよ」
スマホが鳴る。
あいつからだ。
タイミングが悪い。無視しておこう。
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