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ここは私達の居て良い場所じゃない。空はー鳥だけに許された世界。私達が侵して良い世界なんかじゃない。
ーじゃあなんで私はここに?
こんなの、神への反逆以外のなんだと言うのか。
それでも私はここまで来た。最終試験である飛行適性検査の場まで。
全ての旋転が終わった時思った。
パイロットなんてとんでもない。
私に出来ることじゃない。
複雑でやるせなくて、諦めたくなるような気持ち。その時、灰色の雲が切れた。
「ー・・・!」
頭上の群青と同行度に分布する雲、眼下の緑の大地、遥か向こうの水平線が光った。
気がつけば、汗じゃないものが溢れそうになる。
抑え込もうとするも、留めどなく溢れてくる。霞む視界、滴る雫。
「ー綺麗だろ。これが空だよ。まるで神々からの祝福を戴いた様な景色だ。」
「ー・・・本当に・・・綺麗です・・・」
「鳥たちはずっとこんな世界で生きているんだ。羨ましいね。」
制御できない雫に何も応えられなかった。
着陸し、エプロンへ帰投する。
「体調は大丈夫かい?」
「ありがとうございます。問題ありません。」
降機する私を見て、強面の試験官は笑顔で言う。
「強いね。大したもんだ。」
「あの・・・」
「ん?」
「ありがとうございました。一生忘れられない思い出になりそうです。」
感謝の言葉を向ける私を見つめた後、背を向けて空を見つめた。
「怖かっただろ。忘れては行けないよ。今後、何千、下手すりゃ何万時間飛ぶかも知れない。でもね、たまには今日を思い出して初心に帰りなさい。」
「・・・あの・・・それってもしかして・・・」
「合否判定。入隊してからは地獄だぞ。頑張れな。」
「・・・!!・・・はい!!」
誰かが言っていた。
ー飛べば人生観は変わる。
だから人間は飛行機なんか作った。何万年前からも抱いていたであろう憧れを自分のモノにするため。
本来生きることの許されない、世界を侵すため。
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