さよなら虚像

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私はみんなで遊ぶよりも、一人で絵本を読んでいる方が好きだった。幼稚園でもずっと絵本を読んでいたかったのに、両親が有名なせいでいつも人に囲まれる。そんな私を妬んで、攻撃してくる子もいた。 私は何もしていないのに、毎日理不尽に晒されて。最終的には私のお気に入りの絵本が破られる有様だった。 なんでこんな酷いことをするのと、なんでいつも酷いことを言うのと。 それまで耐えてきたものが壊れて、大泣きしたのを今でも覚えている。そのあと私を攻撃してきた子たちは一人残らずいなくなった。 だから私は目立つのが怖い。 ……勝手に攻撃の対象になってしまうから。 だから私は誰かと話すのが怖い。 ……私が少しでも不快感を口にすれば、周りの人間がその人を排除してしまうと知ったから。 だから芸能界になんて入りたくなかったのに。 どうして。あの子たちは私の前から引き離したのに、芸能界から私を離してくれないの。 心が今にも壊れそうになった時、天啓が下りた。 ふと、思い出したのだ。 二年前、人気アイドルがファンの男に刺されて重傷を負った事件があったこと。 これだと思った。これしかないと思った。 誰も私の悲鳴に耳を傾けてくれないのなら、私が自分の手で終わらせるしかない。 壊れそうと思っていたのは勘違いで、もしかしたらとっくに壊れていたのかもしれない。 「私、アイドルになりたい」 わざわざ地獄の底を目指すなんて、正気なら考えられないのだから。 この地獄で初めて口にした希望は、多くの人を喜ばせた。子役になった時とは比べ物にならないほど早く。完璧に。私のための舞台は整えられて。 華々しく私、小鳥遊みきはアイドルデビューを果たすことになった。
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