Encore3.『リズミック・ラブ』

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一度彼の練習を見に行った時、 メトロノームを見ながら、永遠に同じリズムを刻んでるのが好きだ、とか言って大分放置されたのを覚えている。 傍から見たら何が楽しいんだと、言いたくもなる光景を、彼のいつになく真剣な横顔を、 目が離せず眺めていた私の、一定のリズムで刻まれていた鼓動は、彼のせいで徐々に速く、狂っていった。 「……よお、」 「どうも、お疲れ様です」 12月中順、冬の始まりかけの季節の夜は、さすがに気温が低く寒いという感情を煽る。ドアを開けた瞬間に入り込んだ冷気とともに、暗闇の中でも映える金色が視界を支配した。 さむ、と小さく呟いた湊くんは、切れ長の涼やかな目元で私を見下ろした。左目のちょっとした黒子に気づいたのはいつだったのか、もう覚えてないくらい昔のこと。 彼を好きになって、2年が経つのか、と他人事のように思う。 尊敬する大好きな友達と、音楽が引き合わせてくれた出会いだった。出会ってから今まで何度も彼等の音に触れ、歌に触れ、それでも色褪せることがないその愛おしい曲達を未だに生み出し続ける彼等は、本当に天才だと思う。 いつまでも追いかけてたいし、聴いていたい。ずっとファンだからね、なんて言ったら桜はとっても嬉しそうに笑って、感謝の気持ちを歌に表してくれた。その歌を聴いて、私はまた泣いてしまった。 だから、私の好きな人が私の大好きな友達を好きなんだという事実は、当たり前で自然なことなんだと受け入れ続けた2年間だった。
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