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だから、1年越しに触れ合った、唇の柔らかさを温度を認識した瞬間、心が震えた。
名残惜しげなリップ音とともに離れていく唇を追いかけるように、そのまま湊くんの顔を見上げれば、澄んだ静かな熱い瞳。
熱に浮かされたまま、目が離せないまま、口を開く。
「"また"酔っ払ってるの?」
私の言葉に少しだけ目を見開いた湊くんは、少しの間の後に困ったような笑みを浮かべた。
「……前科があると気まずいな」
「覚えてるんだね」
「そりゃな。けど今日は酔ってない」
「……?」
「酒なしでお前に言いたかことがあってきたけん、酔うとらん」
一拍おいて、上手に間を取られる。気づいたら彼のリズムの手の内で踊らされている。
簡単に、目が離せなくなった私に、湊くんはいたずらっ子のようにくしゃりと笑って、私の耳を優しく擽った。
「──絵梨花のことがばり好きったい、
俺と付き合うて?」
……う、破壊力。
しかも、若干首を傾げながら甘くおねだりするような言い方。ずるい。しんどい。
……すき。
心臓の鼓動が速すぎて、追いつけない私はとりあえず口をぱくぱくさせながら、顔を真っ赤にせていく。上手く言葉にできないから苦しくなって湊くんの手をぎゅっとと握れば、甘やかすように指を優しく撫でられた。
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