1/3
前へ
/5ページ
次へ

 右足の親指と人差し指の付け根を、一匹のアリが這っている。 「なんで小坂に目をつけた?」  最上は怒気のこもる声音でハナエに訊いた。 「……目なんかつけてない。ただ、仲良くなりたかっただけだよ」  言って、ハナエがかすかに笑みを浮かべた。 「いや、お前には分かってたはずだ。小坂がお前に惚れるのを」 「私には、だれかと仲良くなる権利すらないわけ?」 「仲良くした結果があれだ」  眼下で暴れる化け物を見ながら、最上は苦々しくこたえた。 「あいつまでショーシンにすることなかったろ?」  最上は、逃げ惑う人々に襲いかかる小坂だったモノから目を背け、ハナエを睨みつけた。 「一体、いつ終わるんだ?」 「最後の一人を倒すまでだよ」 「そんなの……無理なんじゃないか? お前が告白される限り、ショーシンは増え続けていくんだろ?」  言って、最上はハナエと契約を交わした日のことを思い出した——
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加