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「気持ちいいですか」
「ん。・・・イッテ。無理に剥かなくていいから。カリんとこ触って」
「あ、はい」
先走りが溢れてくると、滑りが良くなってグチグチと卑猥な水音がしてくる。落合は筋が浮かび始めたペニスや快楽に緩んだ肇の顔を凝視しながら喉を鳴らす。
獣のように落合の口が開いて、肇の胸や腹にキスの雨が降ってくる。口が届かない背中や脚には手が這い回る。肇の中心を扱きながら身体を貪る落合は、確かに雄そのものだった。
「ん、出るっ・・・」
間隔が短くなった呼吸と一緒に精液を吐き出せば、落合の身体もぶるっと震えていた。
興奮が吐息に混じって、欲望にギラついた目と肇の目が合う。食われそうだな、と漠然と思っていれば案の定また覆いかぶさられた。
熱情に翻弄される落合とは対象的に、肇はそれを冷静に俯瞰する。気持ちいい感覚だけ拾い集めて、流れに身を任せることにした。
終わった後は身体が重かった。落合の手は肇の後孔の中にまで侵入し好き勝手に振る舞った。
落合が絶頂を迎えた気配がなかったが、帰った後にマスターベーションをすると満足そうに話していた。
「どうやってすんの?」
肇の問いに落合は目を見開く。しかし性器の一部が残ってるのでそれを使ってするのだと教えた。
服を着終わったが、まだ時間は残っておりなんとなく駄弁りながら話す。
性転換手術の話も少しした。2人以上の精神科医に診断書をもらわなければならないとか、胸を取る手術したあとは痛くてひと月くらい腕が上がらないとか、聞いているだけで肇はげんなりした。
「アンタすげーな。よくやるわ」
純粋に感嘆してみせる肇に、落合は再び驚く。周りには反対ばかりされていたそうだ。
「それに女だった時の自分が嫌で嫌で。写真とか持ち物とか全部処分したし、付き合いのあった人間とも縁を切りましたしね。戸籍は変えられたけど、全部終わったらなんも残ってなくて、なんか虚しくなって」
落合は顔を少し伏せる。黒い目にすっと影が降りた。しかしすぐに顔を上げて
「今日はちょっと元気でたかな。俺でもセックス出来るんだって思ったし。鈴木さん気持ちよさそうにしてたし」
ニヤリと悪戯っぽく笑った。
「一生分のオカズになったかな」
「お前だったらいくらでも相手見つかるだろ。見た目だけはいい感じだし」
「鈴木さんすごいですね色んな意味で」
ダラダラと過ごすうち部屋を出る時間になって、料金を割り勘で精算してからホテルを後にする。
「もしまた相手して欲しいって言ったら、セックスしてくれますか」
ホテルの出口で落合に聞かれた。他の人間にもたまに聞かれるが、肇はいつもこう答えている。
「気が向いたらな」
落合はそうですか、とふっと表情を和らげて、来た時よりも軽い足取りで帰っていった。
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