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二、友からの知らせ
再会する少し前、彼に関して幼なじみの玲子から聞いていた話があった。
「ねぇ、覚えてる? 中学の時あたしたちのクラスにいた、中山くんて男の子。背が高くて、口数の少なかった子」
「覚えてるよ。今思うと、結構ハンサムだったような」
「今思うとって言うけど、あの頃そう思ってた女子はいっぱいいたと思うよ。バレンタインチョコなんてどっさりもらってたし」
玲子とは小学校から高校まで同じだった。私の派遣先のビルが彼女の勤めるオフィスの近くだということがわかってから、時折ランチを共にするようになっていた。
「で、中山くんがどうしたの?」
そう訊ねると玲子の顔が少し暗くなった。
「うん、昨日うちのお母さんから聞いたんだけどさ、病気なんだって。二年も療養型の病院にいたんだけど、治る見込みがないならやっぱり帰りたいって主治医に話して、帰ってきたらしいの」
中山くんのお母さんが玄関に行くと、小さなボストンバッグを一つ携えた中山くんが立っていた。彼がただいまと言った途端、ことの成り行きが何故かお母さんにはすぐわかったらしい。
「私は家で息子を見送ることになるわ」
中山くんのお母さんと玲子のお母さんは今もたまに連絡を取り合っているそうだ。まるで普通の世間話のように、気丈に話していたらしい。
「今はまだ、体調が良ければ外出も出来るみたいで、週末は道の駅までドライブしたり、ショッピングモールまで行くこともあるんだって」
今はまだ。
玲子のその言葉は、私の耳に突き刺さるようだった。
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