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ピンポーン
キッチンを出て、リビングの壁に取り付けられたインターホンの液晶画面を覗く。オレンジ色のポロシャツ姿の壮年男性が、苦い表情で突っ立っている。
「……俺だ」
声を潜めるように、ボソリ小声で名乗る。
濃紺のジャケットに、白いパンツ。爽やかなマリンスタイルを崩したような、アーバンテイスト。よく見ると、顎の先端に申し訳程度の髭が生えている。まぁ、似合わないこと、この上ない。
「おい。早くしてくれ」
「あらあら、ごめんなさい。今、開けますね」
急かされてから、操作パネルで開錠して、玄関に向かう。仕方ない、今日くらい出迎えてあげましょうか――最後なんだから。
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