先輩、逃げなくていいんですか?

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◆◇◆  自宅は古いアパートで、比較的壁も薄い。隣の部屋でテレビが付いているのが気配で分かるくらいの薄さだ。  暗い部屋に戻って、電気も付けずにジャケットを座椅子の背もたれに放り、ネクタイも適当に外して投げ込む。そうしてそのまま、ベッドへと倒れ込んだ。  俺は、相馬が好きなのか? 相馬は俺の事が好きだと言った。キスしようとしたってことは、そういう方向でだ。  嫌……か? いや、それは何か違う。俺は拒んでいなかった。もしも隣の客が壁を叩かなかったら、俺はあのまま相馬を受け入れていた。  受け入れていたら、どうなっていた?  想像したら、途端に心臓が煩くなった。そしてしっかりと息子が反応してしまった。 「マジかよ……っ」  だって、相馬はいい奴で、気遣いもできて、可愛い部分も多くて。それになんだか、色っぽくて……。  思い出したのは昨日の泣きそうな顔。柔らかそうな唇に、頼りない視線だ。 「んっ」  股間が窮屈だ。急いでスーツの下を脱いで、一緒に下着も脱いでしまう。愚息はもの凄いやる気を出してガチガチに硬くなっていた。  このまま触れるのは、怖かった。確かに俺はこれまで彼女なんていなかったし、モテた覚えもない。勿論童貞のままだ。でも、普通にグラビアアイドルとかをおかずにしていたし、AVも愛用している。そんな俺が、今このまま相馬を想像してこれに触れてしまったら……もしも達したら。それは、俺も相馬の事をそういう対象として見ているということにならないか?  でも、もうこれは放っておけば収まるというレベルではない。ちんこが痛くてたまらない。 「疲れてるんだよ、きっと」  そうそう、これは疲れ魔羅というやつだ、きっと。  言い訳をしながら、俺は自分で握り込んで上下させる。途端、抜けるような快楽が背骨から脳内まで突き上げて一瞬目眩がした。  こんなに気持ちいい自慰はいつぶりだ。それこそ、そういう事を覚えた頃みたいだ。  ニチニチと嫌らしい音がして、それにも煽られて止まらない。ガッチガチに血管を浮き上がらせ、たっぷりと先走りをこぼして。息を上げて掠れるような声を僅かに漏らして。 「い……イク……んぅ! んぅぅ!」  必死に声を飲み込みながら、咄嗟に俺が手にしたのは今日相馬が新しく買って返してくれたハンカチだ。その中にこれでもかと大量に射精した俺は疲れ果てて余韻の中。なにも頭が働かない。もうこのまま寝てしまいたい。  だが、手の中が気持ち悪い。見ると真新しいハンカチが俺の精液で汚れまくっている。 「……最悪だ」  どうしよう、これ。あいつがせっかく買って返してくれたのに、こんな使い方をして一発でお釈迦にするなんて。  捨てる……のは、忍びない。ティッシュで後処理をして、のろのろと起き上がってハンカチを洗った。そうしたらもう気力は尽きて、水を飲み込んだらそのまま風呂も入らずに俺は沈んだ。
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