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君が余
「ほう」
「あ、あなたは一体何者なんだ?
どこから来て、どうしてここに来た?」
「面白い質問だね」
それから「余」は自分は言うまでもなく人間ではないこと、この部屋より前に居た処はいわば地球の真ん中と人間の一部が意図的に誤って理解している世界からやってきたこと、人間がこの地球の最上位の生物といった認識はとんだ思い上がりであること、一般大衆が知らされている情報と科学製品は乱暴に言っておよそ一世紀のズレがあること、勿論宇宙は愚かな人間ごときが的外れな恐竜の化石復元と同じくらい甚だ見当違いのまま、それすら一部の人間の作為的、一般大衆に知らされているということ、蛇を嫌っている人間と崇めている人間がいて興味深いということ、そもそも人間同士でいまだに争い続けて滅亡と再生を繰り返していることの滑稽さがまるで闘犬や闘鶏の類いであるかのように面白おかしく語り出した。
男には「余」が何を言っているのかほとんど理解出来なかったが、「余」がなにやら楽しそうに話しているのは伝わった。多分これを何度かされた情報転移で一辺に伝達してしまうと男はショック死したであろう。
敢えて口頭で語ったのは「余」の男に対する一種の優しさであった。
「こ、この世界が僕の知っているすべてじゃないみたいだってことはわかったよ、でも僕が知りたいのはそんなことじゃない、何だって出来る貴方が何故僕と同じ姿になってここに来たのかが知りたいんだよ」
「その言葉を待っていたんだ、不老不死で地位も名誉もどんなものでも思うがままに手に入れられるものが感じる不具合はなんだと思うかい?」
「な、何?」
「虚しさと寂しさだよ」
それは男が求めるものを意のままに得た時に感じたこととまったくもって同じ感情であった。
「余は退屈しのぎの話し相手に可哀想な君を飼うことに決めたわけだ、そうだなぁ、君達の言葉で言うなれば愛玩動物、それでいて貴重な余の理解者というわけだ」
「そ、それはちょっと複雑な気分だけど、で、でも不幸だった僕を助けてくれてあ、ありがとう」
「いやいやなんのなんの、ところで君は最初から何か勘違いをして居なかったかい?」
「え?」
「思ったとおりだ、では言い直そう」
「この『余』のすべてを知りたくないかい?」
そうして余と男は深い仲になった。
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