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火星と木星の間にある小惑星帯を抜ければ、船は更に加速され時間のズレも一層大きくなって行く。アインシュタインの相対性理論から導き出された浦島効果を如実に体験している今、地球と天王星の間を往復する船旅の長さを考えずにはいられない。
半世紀。五十年の長さに縮められたとも言えるが、軽く世代二つを跨ぐ往復の長さ。最もそれは地球での話で、船に乗る僕等には僅かに五年もない旅だ。
「天王星のダイアモンドを君に」
そんな甘い言葉を口にしたのが僕にとっては半月前で、画面の向こうに居る彼女達には四年前である事実。
地球の時間に置き去りにされていると考えれば寂しくないとはうそぶけないが、同時に僕は数少ない惑星間航行の船員になれた誇りを持っている。
「必ず帰る」
決意と共に、例え時間のズレがあろうとも君に会いに行くと告げたつもりだった。それが着任一日の時を経て、『貴方の子供を身ごもった』との報告で二人の元に帰る約束に変わった。
嬉しい誤算だと思う。
画面越しでしか会えない娘には、触れられないのが残念で仕方ないけれど。
「この子、貴方に似て知能が高いみたいなの」
母として娘をしっかりと抱く彼女との通信はそこで途絶えた。
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