失くした時間を共に

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小惑星帯通過後、加速した船の時間と地球時間のズレ。細かく組まれた僕のタイム・スケジュールが妻と娘の時間に上手くかち合わなかったのもある。加速に因る重力の増加が、双方向の通信に掛ける作用と負担もあった。 何よりもそれ以上に、妻子が僕に置き去りにされたと強く考える様になっての断絶だったのだろう。 我武者羅になって各惑星での任務を果たしたのは、僕自身が仕事に逃げて、より過酷な条件下に身を(さら)し余計な物事を考えない方へ身を縛ってしまいたかったからだ。 努めて明るく振る舞っていたから、仕事仲間達が気を遣って過度な詮索はしないでくれただけに五年の時はあっと言う間だった。 だからこそ、地球の土を踏むのが怖かった。 目の前の仕事をひたすらに機械の如く正確にこなし続けて来た僕には、帰りの船の中で今までを思い起こし考える時間がたっぷりあったのもある。 時間に取り残されたのは、この船の仲間も同じだと考えても寂しいものは寂しい。 僕の両親も親戚も、友達も皆五十年先を生きている。 寿命を迎えた人だって。 改めて考えれば、半世紀の時は余りにも中途半端な時間だ。 知り合いが生き残っている事実が、僕達に味合わせるのは何なのか。
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