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口早やなやり取りに思わず割って入っていた。
僕の予想が当たっていたなら、ここに入院している娘が、外に出たのではないかと看護師の表情で感付いたからだ。
「あの、末明さんのお父さんですよね」
向きを変えて、謝罪の言葉を看護師は述べ始める。
僕の姿は、各種映像媒体で知られている筈だ。
娘や妻を知るなら、僕の事だってこの人は予備知識として覚えているだろう。
「私に、心当たりがあります」
謝る看護師と僕の言葉を遮り、慶介さんが駆け出す。
「着いて来て下さい」
「武藤慶介さん、末明さんのお父さん」
看護師の呼び声も無視して僕も後を追う。
何か体を鍛えているのか、慶介さんの走りは年齢の割りにしっかりとしていて速い。宇宙での仕事で、筋力の低下している僕では見た目は若くとも着いて行くだけで必死だ。
ただ道路は走り易かった。完全にフラットな造りになった道には、障害者用の点字ブロックぐらいしか凹凸はなく、電線などは完全に地中化されて、最新だと分かる道に至っては光の点滅が走り去る車を誘導している。
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