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何よりも、彼らは自ら、何者かによって、入れ替えられたと主張していた。彼らは、ある夏の夜、大きな川の土手の上に車を止め、いちゃついていたところを、UFOにさらわれて、色々検査され、土手の草むらで目が覚めたが、その時はもう、入れ替わっていたと語っていた。
担当の取り調べ官は、かられには虚言癖があり、覚醒剤も所持していたことから、作り話か幻覚かのどちらかだと判断して調書を書き換えていた。
「これは、もう一度、調べ直してみる価値があるかも知れない」と、賢太は同僚の若い女刑事、あゆみにつぶやいた。
「何をですか?」
「和製ボニーとクライド事件さ」
「あれはもう、判決が下りてますよね。」
「事件は単純だから解決したけど、自分たちが入れ替わったって言ってることだよ」
「ああ、あれですか」。女刑事にしては珍しく、明るい色に染めた長髪をかき上げながらあゆみは言った。彼女は去年から賢太とコンビを組むようになったが、それまではFBIとニューヨーク市警で心理捜査の実務を研修していた。日本に帰ることが決まって配属されたのが、賢太のいる特別捜査室だった。
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