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「うんうん。今日は時間もあることだし、後でお散歩もさせてあげたいな」
「おお、それは良い考えだね! それにしても、朝から時間も気にせず堂々と生物室に入り浸れるだなんて最高だなぁ」
「メガネくんとは気が合うね。さっき、まったく同じことを思ったよ」
「ふふん、さすがは羽鳥くんだ。今日は思う存分、我が愛し子たちと遊ぼうじゃないか!」
しかし、和やかに微笑をかわしあう私たちに、死んだ魚のような瞳を向ける人物が一人……。
「あのねぇ、二人とも。今日がなんの日だか、おわかりかしら?」
るりだ。不満げに唇を尖らせながら、スマホをもてあそんでいる。
「いかにも。今日は、我が生物部自慢の生き物たちの魅力を全校生徒に知らしめる日だろう?」
…………。
メガネくんの自信満々な回答に、ただでさえ静かだった生物室が、水を打ったように静まりかえる。小松菜をもぐもぐしているかめきちも、首をかしげているように見えた。
「おや? 何か間違ったことを言ったかな?」
「いや。趣旨は合っていると思うよ」
趣旨はね。
ただ、達成できているかどうかは別の話だけど……。
るりは、バンッ! と机に手をついて、もう限界! というように叫んだ。
「メガネも、ちゃあんとわかっているじゃない! そう、今日は華の文化祭なのよ!」
そうなのだ。
私たち三人がこうして朝から生物室に集まれているのは、今日が文化祭だからに他ならない。
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