第五章 らしくない

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「あっ、王子先輩だ~!」  お昼休み。  購買でお弁当を買って教室に戻ろうとしたら、ちょうど視線の先の渡り廊下を王子先輩一行が通りがかった。 「きゃーっ。相変わらず、かっこいい!」 「取り巻きの数もすごいなぁ」  彼は、今日も、華やかな女の先輩たちに囲まれている。  廊下を歩いているだけで、注目の的。  生物室で気兼ねなく会話をするようになってからは忘れかけるけれど、校内でたまに見かける先輩はいつもあんな感じ。 「なんてゆーか、こうやって遠くから眺めてると、やっぱり雲の上の人って感じだよねぇ。王子先輩」  るりも、感心したような顔つきだ。  そういえば、最近のるりは、すっかり元気を取り戻している。原先生の噂の一件が根も葉もないことだったと知ったのだろう。  親友が元気そうでなによりだ。私も嬉しい。  立ち止まった先輩たちは、輪になっておしゃべりをしはじめた。どんな話をしているのかまで、この距離ではわからない。  普段の王子先輩は、いったいどんな話をするんだろう?  考えてみれば、私って、先輩のことを全然知らないな。いつも、聞いてもらうばかりだったんだ。
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