第五章 らしくない

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 ぼうっと眺めていたら、彼が肩の凝りをほぐすように、身体を回しはじめて。  先輩と、私の視線とがぴたりと重なった。  にこり、と。  微笑みかけられた気がして、一気に、顔中に血液が集まる。 「きゃーーっ! わたしっ、いま王子先輩と目あっちゃったんだけど!」 「えー? 自意識過剰すぎぃ。気のせいじゃないの~?」  周囲の女子の黄色いに、ハッと我にかえった。  ――今の私、まさに、自意識過剰過ぎだった!  恥ずかしすぎる……。 「佳奈? なんか、ボーッとしてない?」 「へ? な、なんでもないよ」 「そう? なら良いけどさぁ」  熱を帯びてしまった頬を冷ますように、早歩きで教室に戻ったら、るりが眉根を寄せながらしんみりと聞いてきた。 「あのさ……。もう、本当に大丈夫なの? その、かめきちのこと」  そっか。  あれから、もう一週間が経つんだっけ。  あの後、先輩と一緒に埋葬場に戻り、みんなにも『心配をかけて、ごめんなさい。もう、大丈夫です』と謝りはした。部活も休んでいない。  そうはいっても、友達が目の前であんな風に取り乱したら、本当の意味でもう大丈夫なのかって疑いたくもなるよね。 「うん。もちろん、なんにも感じていないといったら嘘になるのかもしれないけど……。生き物を飼っている以上、いつかはって覚悟していたから」  購買で買ったメロンパンをかじりながら、るりはため息をついた。 「そっかぁ。うーーん、なんだかもどかしいなぁ」
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