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ぼうっと眺めていたら、彼が肩の凝りをほぐすように、身体を回しはじめて。
先輩と、私の視線とがぴたりと重なった。
にこり、と。
微笑みかけられた気がして、一気に、顔中に血液が集まる。
「きゃーーっ! わたしっ、いま王子先輩と目あっちゃったんだけど!」
「えー? 自意識過剰すぎぃ。気のせいじゃないの~?」
周囲の女子の黄色いに、ハッと我にかえった。
――今の私、まさに、自意識過剰過ぎだった!
恥ずかしすぎる……。
「佳奈? なんか、ボーッとしてない?」
「へ? な、なんでもないよ」
「そう? なら良いけどさぁ」
熱を帯びてしまった頬を冷ますように、早歩きで教室に戻ったら、るりが眉根を寄せながらしんみりと聞いてきた。
「あのさ……。もう、本当に大丈夫なの? その、かめきちのこと」
そっか。
あれから、もう一週間が経つんだっけ。
あの後、先輩と一緒に埋葬場に戻り、みんなにも『心配をかけて、ごめんなさい。もう、大丈夫です』と謝りはした。部活も休んでいない。
そうはいっても、友達が目の前であんな風に取り乱したら、本当の意味でもう大丈夫なのかって疑いたくもなるよね。
「うん。もちろん、なんにも感じていないといったら嘘になるのかもしれないけど……。生き物を飼っている以上、いつかはって覚悟していたから」
購買で買ったメロンパンをかじりながら、るりはため息をついた。
「そっかぁ。うーーん、なんだかもどかしいなぁ」
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