第五章 らしくない

4/17

45人が本棚に入れています
本棚に追加
/198ページ
「え?」 「あたしも、佳奈の助けになりたいのに」 「いきなりどうしたの。こうやって一緒にいてくれるだけで充分だよ」 「でも……。いつも助けられてばっかりなんだもん。この前の真ちゃんの噂のことだって、根回しをしてくれたんでしょ?」  なんだ、そこまで知っていたんだ。 「あれは、たまたま原先生が部室にやってきたから、ちょっと話を振ってみただけ。大したことはしていないよ」 「中学の時もさ、あたしが恋愛絡みのいざこざに巻き込まれてハブられてた時、佳奈だけは気にせず話しかけてくれたでしょ? あたしが不登校にならずにすんだのは、佳奈のおかげだよ」  懐かしいな。  るりとは、中学二年生の時に初めて同じクラスになった。  彼女は、その当時から、明るくてかわいい今時の女の子。教室内でも一番目立っている、派手な女子グループに所属していた。  対する私は、教室の隅の方で大人しくしているタイプ。いわゆる、ぼっちというやつだ。クラス替えをしたばかりの頃、いきなり風邪をこじらせて登校できず、グループに入りそびれたから。  るりがいた女子グループは、休み時間になるたび、男子たちと楽しそうに会話をしていて。私はその様子を教室の隅から眺めていた。  正直に話すなら、あの中の誰かと関わることだけはないと思っていた。そのぐらい、私と彼女たちとは、相容れない存在だったから。  だけど、クラス替えをしてから二か月が経った頃に、転機が訪れる。  ある日の教室で、るりが、いつも絡んでいる子たちに素っ気なくスルーされているのを目の当たりにしてしまったのだ。
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加