第五章 らしくない

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 違和感を抱いていたら、同じ日に、彼女たちが『るり、マジで最低だよねぇ。口ではあれだけ優紀のことを応援してたくせに、まさか自分が告白されちゃうなんてさ。絶対、るりの方から色目を使ったに違いないよ』と陰口を叩いているのを耳にした。  どうやら、るりは、告白されたことを責められているらしかった。  それまで輪の中心にいたるりの周りからは、潮が引くように人が遠のいた。教室中のみんなが、目立つ女子グループの発する静かな圧を恐れているのを肌で感じた。  事態を静観していた私は、ふと思った。  これは坂本さんと仲良くなるチャンスなのでは、と。  女子だけでなく男子までもが平然と彼女を無視するようになった中で、私は流れに逆らうように、機会さえあればるりに話しかけた。  すると、るりは、そんな私のことを心配した。 『あの、羽鳥さん。話しかけてくれるのは、ありがたいけど……あたしと話さない方が良いよ』 『どうして?』 『だって……羽鳥さんも、目、つけられちゃうかもだし』 『そうはいっても、もともと一人だったから。むしろ、坂本さんと話せるのが嬉しいの。迷惑じゃなければ、これからも話したい』 『そう、なんだ……。あのさ、羽鳥さんは……どう思ってるの?』 『え?』 『……あたしが、みんなの言うように、優紀を裏切ったんだって思ってる?』 『さぁ。よくは知らないけど、坂本さんは、何もしなくてもモテるでしょ。だって、すごくかわいいもん』  それは私の飾らない本音だった。
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