第五章 らしくない

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「でしょー? あ、佳奈は好きになっちゃダメだからね!!」 「それはないから大丈夫」 「そんなにきっぱりと断言しなくても良いのに……」 「どっちなの? 乙女心って複雑」 「言っておくけど、佳奈も乙女だからね?」  くすくすと笑いあう。 「あたしね、心の底から、佳奈には幸せになってほしいなぁって思うよ」 「それはどうも」 「クールだなぁ」  クール、という言葉に、落ち着いていた心臓がざわりと反応する。頭をかすめたのは、冷静とはほど遠い反応をしてしまった、先輩を見かけた時の自分。  ねえ、るり。  さっき、先輩がたくさんの女の子に笑いかけているのを目の当たりにした時にね、ほんの一瞬だけ、あの笑顔が私だけに向けられているものだったら良いのにって思ったんだ。  らしくないよね。  胸の内のもやもやを打ち明けるか悩んでいたら、昼休みの終わりを告げるチャイムの音が鳴り響き、五時間目の授業が始まった。
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