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「あれ。今日は、羽鳥さん一人なの? メガネくんと坂本さんは?」
水槽の掃除が一段落したところで、今日も王子先輩が裏口から生物室にやってきた。
「メガネくんは、以前、見学に行った塾に入ることに決めたそうで、毎日は生物室に来られなくなると言っていましたよ。るりは、バイトの面接だって」
「へえ、塾かぁ。まだ一年生なのに勉強熱心なんだね」
「それはそうと、先輩の方こそ、勉強の調子はどうなんですか? 二年生は、そろそろ本格的に受験勉強が始まる頃でしょ。生物室で油を売っている時間もないのでは」
「はは……。羽鳥さんって、わりと辛らつだよね」
「これでも心配しているんじゃないですか」
「ありがとう。でも、こう見えて、勉強方面で困ったことはないんだ」
「えっ! 意外過ぎるんですけど」
「ハッキリ言い過ぎだからね?」
「すみません、つい」
「まったくもう」
王子先輩のことだから、てっきり、ファンの女の子たちに甘やかされて、宿題を見せてもらったりしていてもおかしくないと思っていたけれど。
「羽鳥さん。今ろくでもないことを考えていなかった?」
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