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「そっか」
先輩は、子を見まもる親のようにあたたかい瞳をしてうなずいた。
「ねえ、羽鳥さん。そこのメダカの餌、取ってもらって良い?」
「ああ、はい」
言われるがままに、目の前にあった餌の瓶を渡そうとしたら、手と手が触れあって。
ドキリ、と心臓が飛び跳ねた。
淡い電流が流れたような感覚にびっくりして、思わず手を引っこめる。
「っ」
「わっ!? あぶないっ!」
先輩が、慌てて、瓶をキャッチしてくれたから間一髪。
「大丈夫だった?」
か、顔が近い!
心配そうに顔をのぞきこまれて、ただでさえ不安定な心拍数がどんどん上がっていく。
「だ、大丈夫ですっ!!」
「そう? でも、なんか顔が赤いような……。もしかして熱でもある!?」
純粋な善意から、たしかめるように額に手を伸ばされ、全力で後ずさる。
「ないないない! 気のせいです!」
ううう。
困惑したような顔をしている先輩が恨めしい。
あれ?
おかしいのは、この程度のことで動揺している私の方なんじゃ……。
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