第五章 らしくない

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「そっか」  先輩は、子を見まもる親のようにあたたかい瞳をしてうなずいた。 「ねえ、羽鳥さん。そこのメダカの餌、取ってもらって良い?」 「ああ、はい」  言われるがままに、目の前にあった餌の瓶を渡そうとしたら、手と手が触れあって。  ドキリ、と心臓が飛び跳ねた。  淡い電流が流れたような感覚にびっくりして、思わず手を引っこめる。 「っ」 「わっ!? あぶないっ!」  先輩が、慌てて、瓶をキャッチしてくれたから間一髪。 「大丈夫だった?」  か、顔が近い!  心配そうに顔をのぞきこまれて、ただでさえ不安定な心拍数がどんどん上がっていく。 「だ、大丈夫ですっ!!」 「そう? でも、なんか顔が赤いような……。もしかして熱でもある!?」  純粋な善意から、たしかめるように額に手を伸ばされ、全力で後ずさる。 「ないないない! 気のせいです!」  ううう。  困惑したような顔をしている先輩が恨めしい。  あれ?  おかしいのは、この程度のことで動揺している私の方なんじゃ……。
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