第一章 恋とは一生縁がないのだろう

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 校内はすでに生徒の家族や他校の生徒でごった返している。それにしても、他校の女子生徒が妙に多かったような? 気のせいかな。  私たち一年三組の演劇の開演は、午後からの予定。  道具係となった私は、そもそも出演もしないし、もう準備を終えているから気楽なものだ。  演劇に出演予定のるりも、午後までは自由。  そういうわけで、さっそく二人で生物室へとやってきたのだけど。 「なーにが『生き物たちのお披露目会』よ! 文化祭がはじまって、もう一時間近くも経ってるのに来客ゼロ! これじゃあ普段の地味くさい活動となーんにも変わらないじゃん!」 「おかしいなぁ。パンフレットに目を通した限り、どう見ても我が生物部の企画が一番魅力的なのに。やれやれ、星燐高校の人間には見る目がないなぁ」 「いやいやいや。文化祭のために何か特別な準備をしたわけでもないし、ぶっちゃけ、ただ生物室を開け放ってるだけじゃん」 「チッチッチッ、坂本くんはわかっていないなぁ。良いかい? 部活動の真髄というのは、日常にこそ宿るんだよ。生きとし生けるものを愛で、観察し、その生態と魅力について語り合う。これ以上に尊い活動を、ボクは他に知らないね。つまり、日々の活動自体がパーフェクトな我が部は、文化祭だからといってあくせく準備する必要すらないのさ。おわかりかな?」
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